私の師匠は沖田総司です【下】
『ごめんね。せっかく僕を成仏させてくれたのにこんなこと言って。今さら別れたくないなんて贅沢言えないよね』
「そんなことありません。私だって師匠と別れたくないです!」
師匠はフッと微笑むと、私の頬を残された両手で挟むと額を合せてくる。
「……記憶を消すのはダメですよ」
以前、新選組を飛び出したときに、師匠と額を合せて記憶を失ったことを思い出した。
間近にある師匠の目が逸らされる。
やっぱり私の中から師匠の記憶を消すつもりだったんだ。
まったくもう。師匠は都合が悪くなると目を逸らすって知ってるんですよ。
「記憶を消さないでください。私は師匠との思い出を忘れたくありません」
『でも……辛いでしょ?』
「辛くてもいいんです。師匠との思い出が私に元気をくれるんです」
それに
「師匠が私の記憶を消したって、思い出してみせます。師匠との絆はどんな糸よりも頑丈ですから、どんなことをしても切ることはできません。
糸を手繰り寄せて思い出してみせますよ」