私の師匠は沖田総司です【下】
美しい容姿に、純白の刃であたりを血で紅色に染めることから、人々は人斬り紅天女と呼び、その存在は水の波紋のように中心から町全体に広まった訳です。

人の噂ほど早いものはないですね。

こうなると奉行所の人たちは重い腰をイヤが何でも上げなければならなくなり、人斬り紅天女の捕縛は新選組にまで要請が来ていました。

私は人斬り紅天女の話しを聞いた時、真っ先にクラスメイトの桜木小鳩さんの姿が頭に浮かびました。

桜木さんは稔麿さんたち倒幕派側の人たちについていますから、幕府の人間だけを狙う理由が分かる。

剣道で全国大会を優勝しているから剣術の腕もある。

それに桜木さんは本当に綺麗な人ですからね。

私と同じ年齢とは思えないぐらい。

「けほっ、けほっ」

「天宮さん、大丈夫?まだ風邪治ってないの?」

組長の心配そうな目を向けられる。

実はお正月の後、私は高熱がでて寝たっきりの生活を送っていたのです。

元々、身体が弱いせいか、寒い時期になるとよく風邪を引くのですが、今回の風邪は酷かった。

でも、今ではずいぶん良くなって、軽い咳がでる程度です。

「大丈夫です。治りかけの咳ですから。組長は大丈夫ですか?この頃体調が悪かったりしません?」

「僕は大丈夫だよ。これからは天宮さんの方が体調管理に気を付けた方がいいかもね」

「う゛っ……。すみません」
< 27 / 267 >

この作品をシェア

pagetop