私の師匠は沖田総司です【下】

「ゲホッゲホッ!」

突如襲った胸の苦しさと激しい咳。最近、治りかけだった咳が悪化したのか、先ほどのような咳をします。

こんな寒い中、水仕事をしていたら治りかけていた咳も悪化しますね。

当然と言えば当然です。

「天宮さん」

「組長!?」

いつの間にか組長が私の後ろに立っていました。

「さっき、すごい咳してたよね。大丈夫なの?」

「大丈夫です。たいした咳ではありません。でも、風邪がうつったら大変なので、私に近寄ったらダメですよ」

作業をとめていた手を再び動かすと、組長が私の前に移動する気配がありました。

そして冷たくなった私の手を両手で包み込む。

触れ合う部分から組長の体温を吸い取り、感覚が無くなりかけていた手に生気が戻りました。

「手、冷たすぎる。僕も手伝うよ」

「いいですよ!組長が風邪引いてしまいます!」

「それを言うなら、天宮さんは風邪を悪化させるよ。ほら、僕に変な気を使わないでさっさと終わらせるよ、分かった?」

組長が真っ直ぐに私を見て、手に力を込めました。こうなった組長は頑固です。

おそらく私が何を言っても聞きません。

「……では、よろしくお願いします」

「うん」

組長が満足そうに笑いました。
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