スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「ー…という形で、“じゃんけん対決”は2勝1敗で編集長組が勝って、部数会議は終わったんだ」

高坂専務から会議の結末を聞き、荒木さんがまさか私と同じ“じゃんけん対決”を行うとは…、それを聞いた先輩達は肩を震わせてる。

「これで部数は決まったから、後はスケジュールの遅れを出さないようにしてね。仁、また昼に」
「ああ、お疲れ」

高坂専務は手をひらひらさせながら会議室を出て、荒木さんは改めて咳払いをする。

「今日は部数会議の結果が良いから、全員定時を守って帰るように。居残りは駄目」
「よっしゃぁ!」

先輩達は定時に上がれることを喜んで、私も久しぶりに早く帰れることが嬉しいな。

「荒木編集長、原稿の内容で相談があるので良いですか?」
「俺も写真のことで確認したい事があって」
「1人づつ聞く」

先輩達が続々と荒木さんの元に集まって順番に話をしていて、私も追加された宿題の1つ目をバックから取り出して、順番に並び、いよいよ私の番になった。

「3つの宿題の内、1つ目です」
「分かった」
「はい、お願いします」

荒木さんにそっと宿題の紙束を渡すと、荒木さんが受け取り、荒木さんの前にはどんどん大量の紙束が重なっていく。

お昼の時間になり、荒木さんは大量の紙束を手に持って会議室を出て、私達も各自でお昼を食べ、その後は私は中畑さんと読者アンケートの集計や保存の作業を続けた。

集計をしてみると“Scoperta”って読者の男女差が大きんだなぁ、スポーツのファンって男性のイメージが強いし、女性に目を向けてもらうにはイケメンの選手を取り上げるべきか…、でもアイドル雑誌ではないし、ページを作るのって難しいな。

「これから取材に行くから、荒木編集長に直帰することを伝えに行く」
「ああ、分かった。いつもの店で集合でな」
「おう。後でな」

佐藤さんはバックを手にして田所副編集長に取材に行くことを告げて会議室を出て行き、先輩達は会議室に残って原稿の下書きを進め、よし、私も集計が終わったら宿題の2つ目に取り掛かろう。

数時間後、黙々とルーズリーフに宿題のアイディアを書いていたら会議室に荒木さんが入ってきて、上座に座り、大量の紙束を整理し始めた。

「皆の原稿のチェックを終えたから、1人づつ取りに来て」

私も先輩達の後に並んで順番を待つけど、何だか学校のテストの返却みたいだと思いながら荒木さんから宿題の紙束を受け取り、とぼとぼと歩いて自分の席に戻って紙束の1枚目に視線を落とす。

うう、赤ペンが早速あって、初めて宿題の抜き打ちチェックを思い出すし、他の先輩達も赤ペンの箇所の多さにがっくりしていて、私も同じ気持ちだ。

漢字の間違いがあれば、別の言葉に置き換えを提案されたり、本当に細かいチェックをしていて、ああ今回も真っ赤だなぁと最後のページを捲り、続きに目を通すと、思わず紙束から顔を上げて荒木さんの方に顔を向けたら、荒木さんも私の方に顔を向けていて口元が少し笑っていた。

この書き方、狡いと心の中で呟いた理由は、黒ボールペンでこう書いてあったから。

“宿題の提出、お疲れ様
今日の会議は宝条さんの“じゃんけん対決”のお陰で勝てた
今日は皆がいるから一緒に帰れないけど
帰ったら一緒にフレンチトーストを食べよう”

赤ペンよりも黒ボールペンで書かれた言葉が心に残り、徐々に顔が熱くなる。

「あれ?宝条さん、具合悪い?顔が赤いよ?」
「へ?あ、えっと、多分疲れがあって…」
「今日は定時に上がれるし、美味しいご飯を食べなよ」
「はい…、甘い物も食べようかなって思います」
「良いね。俺もチョコとか食べたいな」
「チョコも良いですよね。私はフレンチトーストを作ろうと思います」

荒木さんへの返事を含めて山田先輩に答えると、荒木さんはフッと笑い、自分の手元にある原稿に顔を向けたのだった。
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