スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
定時になり四つ葉を先に出たのは私達で、荒木さんは戸締まりをして会議室を出るとのことだった。

先にシェアハウスに帰宅し、リビングに入ってバックを小さいソファに置いて、早速フレンチトーストの下準備を始めようと冷蔵庫から材料を取り出し、2人分の食パンと牛乳と卵を取り出す。

2人分のフレンチトーストに使う牛乳はそこまで多く使わないし、まだ余っちゃうな。それだったらスープに使いまわそうと、リビングの小さいソファに置いたバックからスマホを取り出してレシピを探し、冷蔵庫にある材料で作れそうなスープのレシピを選び、フレンチトーストは荒木さんが帰ったら焼き立てで出したいから、先にスープ作りから始めた。

順調にスープ作りが進み、小さなお鍋からはぐつぐつとスープが沸騰する音が聞こえ、香りもいいなと眺めていたら、ポンと頭に手が置かれたので、バッと振り返ったら白シャツの荒木さんが立っていて、いつの間に帰ってきたなんて気づかなかったな。

「おかえりなさい」
「ただいま」

荒木さんは私の頭に置いてあった手を離した。

「出来ることある?」
「この後はフレンチトーストを焼くだけですが、スープの味見をお願いしても良いですか?」
「うん」

私は体の向きを直して荒木さんは私の隣に並び、私はコンロの火を止めてスプーンで一匙掬って熱さを和らげるために息を数回ふぅと吹いて荒木さんに向けた。

「あ…」
「………」

しまった、小皿にスープを注げば良かったと気づいたけど、荒木さんは差し出されたスプーンをじっと見て少しかがんでスプーンをバクッと口に含み、か、顔の距離が私と近くて、私の心臓がバクバクと鼓動が早くなる。

そっとスプーンから口が離れゴクリと飲む音がし、荒木さんは私からスプーンを取るとスープを一匙掬って息を数回吹いて、今度は荒木さんが私に差し出した。

「味見」
「はい」

私もスプーンを口に含んで離し、ゴクリと飲むと温かいスープが全身に行き渡る。

「どう?」
「……美味しいです」
「俺も美味しい」

私が答えると荒木さんはフッと笑い、まだ洗っていない使いかけの調理器具を洗い出した。

「ありがとうございます」
「俺が食べたいって言ったし、やるのは当たり前」

荒木さんは淡々と答えるけど、こうして進んでやるのって優しいし嬉しいな…、擽ったい気持ちになりながらスープを仕上げ、フレンチトーストを焼いたのだった。

「頂きます」

2人でローテーブルの側に座り、フレンチトーストとスープを組み合わせた夕食を食べ始め、うん、美味しくて顔がほころぶ。

荒木さんは前髪で表情が読みにくいけど、スプーンやフォークを使って黙々と食べているから安心した。

食事を終え、一緒に食器を洗い、私達は大きいソファを背もたれに使い、並びあって床に座り、荒木さんが作ってくれたホットミルクを飲みながら、話題は部数会議での“じゃんけん対決”の話になる。

「水瀬が3回連続のあいこの後で負けて、相当凹んでた」
「会議室の盛り上がりはすごそうですね」
「高坂さんと姫川が楽しんでたな」

ああ、何だかその風景が思い浮かべられるし、会議室での高坂専務はあの笑顔だもん、相当楽しんでたよね。

私はマグカップをローテーブルに置いて、ピンク色の小さいクッションを抱きかかえた。

「荒木さんが“じゃんけん対決”を提案するなんて、思いもしなかったです。私達がいる会議室ではいつ終わるか、ずっと皆で悶々としてましたから」
「何も決まらない時間が勿体ないし、雑誌の進行を進めたいし、どうしようか考えたら宝条さんの“じゃんけん対決”が浮かんだ」
「負けたらどうするんですか?」
「勝つ自信しかない」

凄い、勝つ自信しかないなんて中々自分からは言えない。
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