スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◇プロローグ:現在、就職活動中です
大学生の就職活動って、どうしてこんなにも長期戦なんだろうか。

私が通う大学の就職活動は3年生の頃から始まって、大学4年になった今もリクルートスーツを着て企業の説明会に参加をする日々を送っている。

今日は同じ出版業界を目指している同期の大野葵に誘われて出版社が集まる合同説明会に行くことになっていて、昨夜は寝る前に企業に提出するエントリーシートや自己PRの紙を何度も清書していたから寝るのが遅くなっちゃった。

私は高校生の頃から恋愛小説を読むのが好きで、小説に登場する主人公が好きになる相手の男性は普段は仕事が完璧に出来てクールなのに甘いものが好きだったり、別の男性は自分より年下なのにここ一番の時は男らしさを見せたりとそのギャップにハマり、男性と付き合ったことがない私にとっては、小説に出てくる男性たちが実際にいたらどんな風に恋に落ちるのかとか妄想をしたり。

それからは就職をするなら本に携わることが出来ることにしたいって思っていたけれど、大学の就職活動コーナーに置かれている求人票は一般職が多くてパソコンから直接出版社のホームページを閲覧して新卒の求人を探すのも一苦労だし、みんなとどこまで進んだかの話をするたびに表面上は平静を装っているけれど、内心は具体的なことが決まっていない自分に焦っちゃう。

ルームウェアを脱いで、クローゼットからリクルートスーツと真っ白なYシャツを取り出し、面接対策の授業で講師から企業の説明会は清潔なイメージを持ってもらうようにと言われ、髪も肩までの長さにおろしていたのをピンとゴムで1つに束ねた"THE就職活動スタイル"だ。

「このスタイルを続けるの、早く終わらせたいよ」

お決まりの就職活動スタイルにぼやきながら、Yシャツの袖に腕を通してボタンを1つずつ留め、リクルートスーツを着て、これで準備万端かな?

リビングに行くとお母さんがキッチンで玉子焼きを作っていて、お父さんは雑誌を読んでいて、表紙には『Scoperta』という綴りでタイトルが書かれていて、初めて見る雑誌だなぁ。

「お父さんは何を読んでいるの?」
「ん?最近買ったスポーツ雑誌で、スコペルタと読むんだよ。野球やサッカー等が書かれているけれど、お父さんが今読んでいる記事は出てくる人がメジャーな選手じゃなくて、裏で支える人にも注目して取り上げているんだ。これを書いてる人の文章はとても上手で言葉にユーモアがあるし、かといって難しい言葉だけじゃなくて、読者にこのスポーツを知ってもらいたいと伝えたいのが読んでいて分かるよ」

読者に知ってもらいたい…、一体どんな出版社なんだろう?普段はスポーツ雑誌なんて読まなくて恋愛小説のような文芸だったりするから、あまりスポーツを専門とした雑誌を読んだことがないや。

「お父さん、その雑誌を出版している名前ってどこ?今日は合同説明会があるんだけど、その出版社の名前を知りたい」
「どれどれ、名前は―…、四つ葉出版社と書かれているね」
「四つ葉出版社……、あまり聞いたことがないかも」
「真琴、早くしないと遅れるわよ」
「うわっ、ヤバイ」

お母さんの言葉に腕時計をみると家を出ないとまずい時間で、私はお母さんがキッチンで作っている玉子焼きを一欠けら口に入れてバックを持って玄関に向かい、パンプスを履いて家を出ていった。
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