スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
走り去る車を見送って、四つ葉の中に入ると水瀬とバッタリと会った。

「高坂さんってもう行っちゃった?」
「青木印刷所と書店に行くって、ついさっき車が出た」
「間に合わなかったか」
「どうかした?」
「今日受け取った郵便物に今度ファッション業界の立食パーティーがあって、俺と副編と高坂さんでって招待状が来てさ」
「高坂さんがいるなら問題ないんじゃないの?」
「う〜ん、主催者側がさ、『高坂さんに紹介したい女性がいるから、今日中にスケジュールを確認して欲しい』ってご丁寧に可愛さ満載の一筆箋が招待状に入っていたんだよ」

ドクンー…と心臓が鳴り、これは亮二に感じた時と一緒の嫌な方の気分だ。

「高坂さんは他の女に興味は無いから平気」
「そうだけどさ。ほら俺って前の交流会でやらかしているから、どうもね、お酒が絡むパーティーは気が進まない」

そう言えばあったな、水瀬が出版社業界の交流会でトラブルを起こした件で、俺は物凄く不機嫌な姫川から話の経緯を聞いたけど、水瀬の行動は正しいし、恋人の元彼は性格がクズで水瀬に殴られてもおかしくないと思ったな。

「その一筆箋のことは頭の片隅に置いておくし、お酒はほどほどに」
「うん、2杯迄にしておくよ。一旦高坂さんが戻ってきたら話をしてみる」

水瀬はじゃあと手を振って2階に向かい、俺もお手洗いを済ませてから3階の会議室に戻った。

会議室には製作班と佐藤だけがいて、佐藤はホワイトボードの前でB班の付箋を手帳にメモをしたり、7月号の付箋を触っている。

俺は佐藤の側にいき、7月号の付箋を確認すると、ページ数を修正テープで塗って敢えて何も書いてない状態にしていた。

「ページ数で迷っている?」
「はい。水泳だと世界大会への出場をかけて争われるので、担当の高橋が『選手がこの試合にかけて挑むのをきちんと届けたいから、ページ数はAより多く取りたいです』と言っていて、他のB班の皆も今まで以上に気合が入っていますし、また田所と揉めるなぁと思います」
「田所も長くA班を引っ張っているし、お互い譲れないのは分かる」
「揉めてページを減らされないように気をつけます」

佐藤はいつも田所とページ数で揉めるから、7月号もそうだろうなと思う。

「佐藤は自分の原稿の調子はどう?」
「そうですね、6月号は代表に初めて選抜されたバレーボール選手の記事で決めていて、後2ページで完成が出来ます」
「分かった。自分の記事を書きながらB班を纏めてくれて、ありがとう」

俺がそう言うと、佐藤はじぃっと俺を見る。

「どうかした?」
「荒木編集長に『ありがとう』って言われるの、凄く嬉しいです。休刊、絶対にさせないようにして、高坂専務にまた“社会科見学”に連れて行って貰いましょうね」
「休刊は阻止するけど、“社会科見学”は直前の日程で開催されるのは勘弁」
「確かにそうですね。俺はこれからバレーボール選手の練習風景を撮るために移動します」
「いってらっしゃい」

佐藤は高坂さんのことで笑い、荷物を纏めて会議室を出ていった。
< 215 / 218 >

この作品をシェア

pagetop