スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
それぞれお会計をして【もりや】を出て、四つ葉に向けて歩き出した。

「仁とは夜に話すのが多かったけど、こうして昼に会うのもいいな」
「そうだな」
「出会った時は高校生だったのに、今じゃ社会人で俺の後任でスポーツ部を引っ張ってるもんな」
「まさか編集長を任されるとは思わなかった。他に適任の人がいたのに」

俺が編集長に任命されるとは思わなかったのは本当だし、実力ある人だっていっぱいいるのに。

「ああ、斉藤だろ?確かに原稿を書く実力あるけど、あいつは公平さが欠けていたし、斉藤が編集長になってたら確実にメンバーの8割は辞表を出していたな」
「8割は凄いな」
「その点仁は公平さがあるし、編集長にさせるなら早い段階でって考えて、俺の人事異動と一緒に指名をしようと決めていた」

稔がポンと俺の肩に手を置く。

「スポーツ部の編集長でいてくれて、本当にありがとう。あの場所を守ろうな」
「ああ、守るよ」

稔が手を離して腕を伸ばして俺の首元に絡んでくる。

「痛い」
「良いじゃん、久しぶりに弟に会えて嬉しいんだよ」
「弟じゃないけど」
「そう?近い未来、“凄く大切な弟”になるのは決まってるんだけどな。勿論、三斗もね」

そっちの意味か。

「三斗が『稔を兄ちゃんって呼びたくない』って」
「え〜、そうなの?」
「俺も呼ばないけど」
「稔、悲しくて泣いちゃう」
「はぁ…」

俺は思いっきり溜め息を吐くけど、稔が兄になるのは嫌じゃないことは黙っていよう。

「この後はいつもの挨拶周りかぁ。直帰したいなぁ」
「しっかりしなよ」
「後数年で親父も定年だし、俺が社長になったら、先ず親父の椅子を今よりデカいサイズにする所から始めようかな」
「……そう言う発想を考えるのが稔らしい」
「一美も同じようなこと言ってた」

稔が腕を離して笑う。

四つ葉が見えてきてビルの前には1台の車が停車していて、側に橘さんが立っていた。

「俺はこのまま行くから、6月号の原稿が揃いそうだったら読ませてね。三輪っちの表紙の写真も楽しみにしてるよ」
「分かった」

稔が車に乗り込むと橘さんが俺に頭を下げて乗り込むけど、また視線を感じるな。
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