スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
やがて荒木さんは赤ペンをペン立てに戻し、大量の紙束を整理し始め、きちっと締められた紺碧のネクタイをグイッと解き、スーツの上着を脱ぎ出し、右手で上着を纏めて立ち上がった。

「チェックを終えたから、清書をお願い。これから田所と合流する」
「分かりました。その後は直帰ですか?」
「そう」
「気をつけていってらっしゃい」

荒木さんが中畑さんのやり取りを終え、そのまま編集部を出ていき、私は先ずは読者アンケートのまとめと資料づくりだ。

「うちの雑誌は巻末にアンケートハガキが付いていて郵送で送られてくるんだけど、総務課がその他の郵便物と一緒に届けに来てくれるよ。まだ宝条さんのパソコンは支給されてないから、暫くは僕のノートパソコンを貸すから、パスワードや取り扱いは慎重にね」
「はい」

渡されたハガキの束を自分の手元に置き、1枚1枚ハガキに目を通すと、シンプルな感想があれば厳しい意見など様々あるけれど、“楽しく読めた”や“このスポーツの魅力を改めて発見が出来た”の言葉に嬉しくなるし、やはり仁さんの記事を読んだ感想が圧倒的に熱量が凄いし、読者を惹きつけて長く掲載されるコツってどんな風にしているのだろうか?

お昼は四つ葉出版社の近くにあるコンビニの場所を中畑さんから教えてもらい、あまりお金はかけられないからサンドイッチ1つとミニサイズのお茶を買い、編集部に戻ると、スポーツ部のエリアには数人の人が座っていたので、先輩達に挨拶をしなきゃ。

「初めまして、本日からスポーツ部に配属されました宝条真琴です。沢山質問をしますが、どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ宜しく。俺はB班の佐藤で、久しぶりにスポーツ部にメンバーが増えるなんて嬉しいな」
「私も女子の後輩が出来るのって久しぶりだから嬉しい」
「今は僕のサポートだけど、その内取材班の仕事もサポートから入るから忙しいけど、みんないい人ばかりだから安心して」
「ありがとうございます!」

良かった…、スポーツ部の先輩達はどの人も優しそうで話しやすいし、何とかやっていけるかな?

先輩達と話しながらお昼ご飯の時間を過ごしていると、編集部のドアが開いて高坂専務が入ってきて、つかつかと私のそばに来て、私の右肩に手をポンと置いた。

「みんなー、注目!今日の夜18時30分からいつもの場所で新入社員の歓迎会をするよー。主役は宝条さんと秘書の橘だから、2人は絶対参加ね」

にこにこしながら歓迎会の宣言をする高坂専務の言葉に、部署内のみんなの表情が明るくなった。

「っしゃあ、久しぶりに定時に上がれそうだ」
「荒木編集長から返された原稿を真っ先に仕上げちゃおう」
「スポーツ部、やる気で良いねぇ。じゃあ、また歓迎会でね」

高坂専務は手をひらひらさせて編集部を出ていくんだけど、周りのみんなの仕事のスピードが早くなってきた感じを受ける。

「A班のみんなにも歓迎会の事を伝えなくちゃ」

中畑さんもルンルンでパソコンのキーボードを叩いてるし、たった2人の新入社員の歓迎会を開いてくれるなんて嬉しいなと思い、私もわくわくしながらキーボードを打った。
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