スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◇仕事帰りのデート
仁さんより先にシェアハウスを出て、最寄り駅から電車で移動するけれど、うう、今日も人の多さに挫けそうになる。

身長が低い私にとっては背の高い人達の圧が凄く、押し潰さてないように銀の手すりをギュッと掴みながら揺れに耐え、まだ藍山駅には着かないので、中吊り広告を見ながら過ごした。

政治、週刊誌、テレビの広告…、わ、あのモデルの子が表紙になっているファッション雑誌が目にとまり、名前はYUKIって名前が見えて、目元がクリっとしていて着ている洋服も可愛い。

最近洋服って買っていないし、お洒落して出かけてない…、三姉妹のラインでお茶に誘ってみようかな?

星野さんって凄くお洒落だし、九条さんも年齢に合わせたコーデだし、大学卒業したばかりの私はまだ服装がその時の感覚ってあるし、2人に教えてもらおうかなと考えていたら液晶画面の広告に芹澤が映し出された。

『来月、いよいよ球宴が開催されます!我々△テレビが独占放送をしますので、どうぞお楽しみに!』

芹澤と複数のアナウンサー達が野球のユニフォームを着て宣伝し、わぁ…芹澤ってどんどんテレビに出ていて凄いな。

藍山駅に着いて駅のホームでスマホを取り出して、芹澤に向けて電車の中で見た液晶画面の広告についてメッセージを送った。

すると直ぐ既読になり、芹澤からメッセージを受信したのでタップして開く。

『ありがとな!感想をくれたの、宝条が一番最初で嬉しい』
『そうなの?』
『ああ。普段というか、俺が出てるのって深夜に近いし、同級生で観ているのは少ないんだよな』
『テレビ離れってこと?』
『それは感じる。でも自分の声でスポーツを伝えられるって、とても良くて。これからまた取材に行くけど、放送を楽しみにしてくれよ』
『分かった!先輩達も野球の球宴を取材しているから、お互い頑張ろうね!』
『おう!』

芹澤と久しぶりにメッセージのやり取りをし、スマホをバックにしまって改札を出た。

四つ葉に向けて歩いていると星野さんの姿が見えて、駆け寄る。

「おはようございます!」
「おはようございます!自宅待機が終わって良かったです」

2人で歩きながら四つ葉に向かう。

「特に怪我はしていないので、1週間はあっという間でした」
「最初は九条さんから経緯を聞いていたので驚きましたが、ほんと怪我がないのが安心しました」
「もう元気なので、大丈夫です」

私はガッツポーズを見せると、星野さんは笑う。

「今度、三姉妹でまたお茶会をしませんか?」
「したいです!あ、後、全然洋服を持っていないので星野さん達にファッションを教えて欲しいです」
「良いですね。私の“知り合い”もその妹さんも凄くファッションが好きなので、コーデの秘訣を聞いてきますね」
「ありがとうございます!後で三姉妹のグループラインで日にちの相談をさせて下さい」
「勿論」

2人でキャッキャしながら四つ葉のビルに入ると、水瀬編集長とファッション部の副編集長と会う。

「おはよう、星野さん」
「おはようございます」

水瀬編集長がニコッと微笑んで挨拶をすると、星野さんも微笑み返して挨拶を返すけど、2人の雰囲気がほのぼのしていて良いなぁ。

「これから副編集長と取り引き先に行くから、郵便物は俺の机の上に置いて大丈夫だよ」
「かしこまりました」

水瀬編集長はそれじゃあと手を振って副編集長と四つ葉を出て行き、星野さんは2人を見送って私の方に顔を向ける。

「それじゃあ、また三姉妹のラインで色々日程を決めましょうね」
「はい!」

1階の所で星野さんと別れ、3階まで階段を上がり、会議室に入った。

黙々と6月号の読者アンケートを入力し続け、今日も沢山のアンケートの葉書が届いたなぁ。

巻頭を飾ったバトミントンの記事はその競技を学生時代にしていた読者達からの声が多く、読者を惹きつけるように書き上げた先輩が凄いし、三輪さんが撮った表紙の写真の反響も凄い。

特に選手の表情をブレもなく額の汗や腕の筋肉もバッチリと撮っているし、ユニフォームの文字もはっきりと分かるから、どんな語彙力を持っても表現が難しいくらい素晴らしい写真だ。

秋山先輩が仁さんと三輪さんのカメラの技術の高さに憧れる理由が分かる。

「今から井上監督の所に行くから、午後3時には戻る。何かあれば電話を取れるようにする」
「分かりました」

仁さんが田所副編集長に声をかけ、会議室を出て行く。

どんな話をされるか分からないけど、シンクロの記事を載せない事を決めているから内心は穏やかじゃない筈…、せめて寝る前にホットミルクか温かい飲み物でリラックスしてもらいたいと思いながらキーボードを打ち続けた。
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