スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
帰宅して自分の部屋でスーツとYシャツを脱いでルームウェアに着替え、明日の面接で聞かれることを幾つか予想しておかなくちゃとあれこれ考えてはいるものの、大学の就職活動を担当する講師を相手に面接の練習をさせてもらっているけれど、本番だと緊張しちゃって用意した言葉がすらすらと出ないんだよね。

「自己PRといい、私って苦手なものが多すぎ」

でもやっと出版社への道に行きたいと思って四つ葉出版社へエントリーしたんだもの、ここで成果を出さなくちゃいけないし、面接対策としてスマホで『Clover』と『Focus』について調べてみると、女性には『Clover』が圧倒的に人気のようでレビューでも絶賛する書きこみが多い。

ファッション以外にも恋愛のページがあって、そこには同棲がテーマの内容で、付き合ってすぐ暮らすなんて有りで、小山不動産、荒木不動産、六井不動産がお勧め物件の紹介がしてあって、住むなら葵とだったら毎日が楽しいだろうな。

お父さんから貸してもらった『Scoperta』を椅子に座りながら読み始め、ページを捲ると先ず目に留まったのはバットにボールが当たる写真が見開きで掲載されているページで、ブレもなく、バットを振る選手の表情、ボールの形までもがはっきりとあって写真全体に迫力があって、普段から読む恋愛小説や文芸誌とはまったく違って、スポーツ雑誌にはこんなにも迫力のある写真を掲載しているんだ。

お父さんが話していたスポーツを裏で支える人を特集したページは、取り上げられている人のインタビューの他にその人が携わるスポーツについてとても丁寧に紹介をしていて、そのページを書いている人の文章はまるで小説家の本を読んでいるみたい。

私みたいなスポーツに疎い人でも専門的な用語は分かりやすい表現で言葉が書かれていて、一体誰が書いてるのだろうかと文章の最後に書いた人の名前をみたら"インタビュアー・文:仁"とあり、読み方はヒトシ?スポーツの記事を書くくらいだから爽やかな感じとか?それともがっしりとした体格で豪快に笑ったりする人とか?

その本人に会ったことは無いのにこの人の言葉に惹きつけられている自分がいて、読み手から作り手になるのって初めてだけれどこの人の傍で私も同じように雑誌を作ることをしてみたい。

明日の面接でどの雑誌に携わりたいか問われる時に、その答えが固まった。
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