スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「明日から仕事だし、先に帰るね」
「おう、お土産ありがとう」

水瀬と別れ、自宅に帰っても又口うるさい親が起きてると思うと憂鬱だなとまたハンバーグを口に運ぶと、三斗が烏龍をグラスに入れて俺の前に置いた。

「アルコールじゃないの?」
「出さないし、そんな風な顔を見るのも嫌だね」
「………バレた?」
「何年稔に付き合ってんだよ。つまみじゃなくてご飯系を頼むときは、大体“姉ちゃん”絡みだし」

呆れた言い方する三斗が俺を下の名前で呼ぶときはかなり親しい間柄に戻るときで、長年の付き合いだと表情が見抜かれるか。

目玉焼きの黄身を潰してご飯と一緒に混ぜて食べるも、いまいちパンチがこないなと思ってたら、三斗がケチャップのデカいサイズをドンと置いた。

「これ」
「ありがと」

何も言わないのに差し出されたケチャップを目玉焼きにかけ、一匙掬って食べたらやっぱりこれだなとホッとする。

「いい加減、“姉ちゃん”に会いに行かないの?」
「良いの?」
「俺の言い方、姫川さんの言い方よりマシだけど」
「確かに。仁にも『稔から聞きに行けば』って言われたな」
「俺よりも仁が一番2人の幸せを願っているし、行きなよ」
「参ったね。三斗に背中を押される日が来るとは」

自分では隣に並ぶ人なんてこの先選ぶことも出会うことも無いだろうと思ってたけど、背中を押すきっかけが欲しかったんだけで、視界が潤みそうになる。

「因みにその和菓子、“姉ちゃん”の大好物だから一緒に食べるなら水瀬さんに感謝しないと駄目だぞ」
「そうなんだ…、兄ちゃん、行ってくるよ」
「はぁ?塩を撒くぞ」
「ごめん、ごめん」
「ったく、もう一度、仁に殴られてこい」
「もう歯が欠けるのは勘弁して欲しいな」
「あれは俺も引いた」
「だろ?」

ワンプレートを平らげて、烏龍を一気に飲み干して財布から代金を多めに払って、和菓子が入った紙袋を手にBarを出て、近くの通りでタクシーを捕まえ、後部座席に乗り込んでシートベルトを着ける。

「南◯駅近くの荒木不動産までお願いします。住所はー…」

行き先を告げてタクシーが走り出し、仁と三斗にも水瀬にも感謝だし、可愛い部下の宝条さんとは“凄く大切な人”の存在を改めることも出来たし、今度それぞれ美味しいランチを奢んないと。

『デートするお相手とお出かけしないんですか?』
『居ないけど、“凄く大切な人はいるよ”』

宝条さんを送る途中で荒木不動産の看板が見えた時、わざとスピードを出しちゃったけど、本当はどうしているか気になってた。

やがてタクシーが目的地に到着し、和菓子が入った紙袋を手に荒木不動産の入り口のドアノブに手をかけて入っていった。
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