スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
「1、2ページだけでも読んでもいいですか?」
「隣に来て」

マグカップを置いて荒木さんの左隣に座り、手渡されたノートを受け取り、中身を捲るとまるで小説ですか?というくらいの文字の量で、綺麗な字は読みやすいな。

野球だけじゃなくて、A班B班両方の分野についてのスポーツも細かく書かれ、1ページを読むだけでも沢山の情報が丁寧に書かれている。

「もう少し読んでもいいですか?」
「良いよ」

捲るたびに荒木さんがスポーツに対する思いや、この言葉だったら伝えやすいのか、色々な工夫があり、特にスポーツを支える人の企画の部分は何度も書き直した所が幾つもあり、私って凄い人と同居しているんだ。

「書けるかな」

圧倒的な文章力の前に自分の力を見せつけられて小声になると、頭の上にポンと手が置かれた。

「宝条さんが届けたい言葉をいっぱい書けばいい。伝わる」

以前佐藤さんが会議室で言った言葉に似ていて、急な励ましに心が温かい牛乳のようにあったまり、微笑むと、大きな手がそっと頭から離れた。

「佐藤さんが会議室で似たようなことを仰ってました」
「佐藤が?」
「前にページ数で田所副編集長とやり合ってた時、“届けたい言葉は沢山書けるよ”って」
「それ、佐藤が初めて壁にぶつかった時、俺が言った言葉」

荒木さんの表情は読みにくいけど、ほんの少し荒木さんが嬉しそうに口を上げてるのが分かる。

「どうした?」
「内緒です…って、髪が乱れます!」

絶対笑っていることを言ったら何言われるか分からないから“内緒”って言ったら、また髪をくしゃくしゃしてくるし!

「ノートを読むの終わり」
「駄目です!ごめんなさい」

荒木さんがちょっと拗ねた感じで私が持つノートを取り上げようとするので、少し抵抗してノートを持って立ち上がって大きなソファに座る。

「静かに読むので、ここで座って読んでも良いですか?」
「別に良いけど」
「ありがとうございます」

私は大きなソファに背を預けてゆっくりとページを捲り、荒木さんは体をテレビの方に向けて鉛筆が走る音がする。
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