スウィート(!?)シェアハウス~2人の秘密の同居生活~
◆出会う前からと、“守りたい”と思うまでside荒木仁
side荒木仁

俺の背後でバサッと音がしたので振り返ると、宝条さんが横になって目を閉じて寝ていて、無防備だな。

顔をテレビに戻してリモコンで民放のスポーツ番組を何回か切り替えていたら、あるテレビ局のアナウンサーが出てきて、じぃっと見る。

『次は僕がグッズ売り場でインタビューした映像です』

佐藤が言っていたアナウンサーか、と思いながら映像を見てるが、宝条さんとこいつの関係を考えると少しムカッとする。

「宝条さんをお前なんかに渡さない」

ボソッと言い、テレビの電源をオフにして鉛筆を持って今日のスポーツのことや記事に使えそうなことを纏めてると、スマホが揺れてメッセージを開けば弟の三斗からだった。

『稔、姉ちゃんの所に行った』
「やっとかよ……」

何年待たせたんだよと思いっきり溜め息ついて、スマホの画面のキーボードをタップする。

『分かった』
『俺、稔を兄ちゃんって呼びたくねぇ〜』
『俺も』
『だろ?今度Barに来たら思いっきり殴ってやってよ』
『考えておく』
『たまには実家にも寄って。3人で食べようぜ』
『落ち着いたら』
『オッケー。またな』

短いメッセージを何回かしてスマホの画面をオフにして、マグカップを洗うために立ってキッチンのシンクに行き、カップを洗い終えて食器棚にしまい、又ローテーブルの側に座ってノートの続きを書き始める。

今度の取材先の人に聞く内容をいくつか決め、亮二に写真をお願いするから相手と道具の写真は5枚づつ頼むだろ、取材が終われば食堂で一度原稿の下書きに入って…と、次の6月号に間に合うように段取りを書いて、忘れないように赤ペンで囲った。

「ん…」

背後から宝条さんの声が聞こえたから振り返ると、まだ目は閉じたままで、このまま起こすのも悪いし風邪を引かせるのもって思うし、掛け布団を取りに行くか。

静かに立ってリビングのドアの音が出ないように開けて、階段をあがって自分の部屋のドアを開け、ベットから掛け布団を取って、静かに階段を降りて1階のリビングに入り、宝条さんに掛け布団をそっとかけて、俺は自分の部屋に戻って明日の準備をしようとノートや筆記用具を纏めてリビングのドアノブに手をかけた。

「行…かない…で」

思いっきり振り返ったら、宝条さんはまだ寝たまま。

「荒木…さ…」

寝言…か。

ドアノブに手をかけたのを止めて、ノートと筆記用具をそっとローテーブルに置いて、ソファに座らずか細い寝息を立てる宝条さんの傍にそっと座り、宝条さんに出会う前から今までのことを思い返す。
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