私の愛した未来


友達より…大切…。


その言葉が胸にジーンと染み渡る。



「友達より大切な存在?そんなもの存在するわけない。この世に存在するのは 家族か友達か恋人くらいだよ。あとはみんなその他大勢。」


あまりにも冷たすぎる表情の林くん。





「そ、それは違う…」


怖いけど、進まなきゃ。
守ってもらってばっかりじゃダメだよね。


私が口を開くと未来は目を大きく見開いて私を見る。


「それは、違うよ…林くんは…間違ってる…」


「何が違う?俺の気持ちに気づかなかった春子ちゃんに何が分かるの?」


「違うのっ…家族と友達と恋人の関係しかないなんて…そんな悲しいこと言わないでよ…」


「春子…?」


未来の心配そうな声。

それでも…言わなきゃ…。


「その他大勢なんかじゃ片付けられない存在もあるよ…」


確かに、未来は私の家族でも、彼氏でもない。
だけど、私にとっては大切な人。


「林くん…未来は…私にとっても大切な人なの…。」


そう言うと林くんと未来は私の顔をじっと見つめる。



「…はぁ…。結局、俺じゃダメなわけね。」


口を開いたのは林くん。


「…ごめん。色々、困らせたよな。もう…春子ちゃんには関わらないから。」


そう言って荷物をまとめて立ち上がる林くん。


「…は、林くんっ?」


「じゃあね。」


そのまま立って教室から出て行ってしまった。


まだ、セミナーも始まってないのに…。


「…未来…どーしよぅ…言い過ぎちゃったのかな…」


「違うだろ。さすがに自分のしてきたこと考えたらお前の前に入れなくなったんだろ。大丈夫。春子は間違ってない。」


そう言って頭を撫でられる。


くすぐったくて、ちょっと雑で、でも優しくて…。

「それに。嬉しかったし。」


「え?」


「お前も俺のことを大切な人って思っててくれたこと分かったからな。」


「そ、そ、それは未来が言い出したんじゃん!」


勢いあまってあんな恥ずかしいこと言うんじゃなかった…。

今さら心臓がドキドキいってる。


「カッコよかったぞ。林に立ち向かう春子。」


「…それ、褒めてる?」


「当たり前だろ。素直に喜べ。」


そう言ってニカっと笑った未来は
どこかホッとしたような表情をしていた。

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