僕たちの音
【美音side】

「お、君可愛いね!是非サッカー部のマネージャーならない!?」

「いやいや、君はバスケ部のマネージャーが似合う!」


「いや、間をとって野球部だろ!?」



はあ……
いい加減めんどくさくなってきたわ。


今日は入学して二日目。

昨日は入学式があり、すぐ終わってすぐ帰った。

そして、今日は優秀なメンバーを入れようと必死に部活勧誘に励んでいる先輩たち。


校門から入り校舎に続く道を進もうとするとあっちからこっちからと部活に勧誘される。

しかも、勧誘されるところ運動部ばかりでマネージャーをやらないかということ。




はあ……

「あの、そろそろ通させてくれませんか。」

ヘッドフォンは付けたまま無表情で答えると一瞬吃驚した表情で私をみる。


なんだろ?私の顔になにかついてるの?

疑問に思ったけど間を縫って囲まれたところからやっと抜け出せた。




なんか、まだ学校生活初日というのに疲労感がハンパないな……


はあ……と深くため息を付いて正面玄関の目の前に表示されたクラス表を見る。


クラスは1-1ね。


中学と同じってちょっとつまんないなあ。

ローファーから上履きに履き替えて1年生のクラスに向かう。


1年の教室は1等1階。

近くてよかった。



クラスに向かってる中沢山の目線が私にわー注がれる。

なんでこんな見られてるの?何か変なものついてるのかな。


流石に"昔のこと"は知らないだろうし……


私は、昔6歳でピアノを習っていて小学三年生までしていた。

絶対音感を持っていて自慢じゃないけど世界的に有名になった6歳の少女というのは私のことだろう。


そのことは今よりも遥か昔7年くらい前の事だからみんな知らないと思う。


まぁ、別に見られてるから何?って感じだし……気にならないって言ったら嘘になるけど、周囲の視線なんてどうでもいいんだ。



1-1と書かれたクラスに入り黒板に書かれた出席番号順の座り方を確認してから席についた。



私は後ろから2番目の窓際の席。

窓際でよかった。


鞄を横のフックに掛けて机に肘をつき窓の外を見た。


まだ部活の勧誘は続いてるらしく、チラシをあっちの人こっちの人と渡していた。



それに、綺麗な桜の木。

窓の外には大きな桜の木が近くにあった。

風が吹くと優しい甘い香りが鼻をくすぐった。


なんか気持ちいな。

目を閉じてしばらくそうしていた。


すると、となりの方からトントンと私の肩を誰かが叩く。

ヘッドフォンを外して首にかけ隣を振り返ってみる。

「ねえねえ、君かわいーね!」

振り返ると同時に発せられる言葉。

可愛い?私が?ないないないないない!

私はぶんぶんと思いっきり横に首を振った。


絶対ない!こんな無表情不細工が!?

物好きにも程があるだろ……


「はは、君面白いね!名前は?」



今度は面白いか。

訳わからんなこいつ。


「綾瀬 美音。」

一言そういうと物珍しそうに私を見つめる。
やっぱり顔に何か付いていたのだろうか。


「なに?何か顔に付いてるの?」


そう言うと一瞬吃驚したような顔はしたが、すぐに腹を抱え笑いだした。


ちょ、何この人。
人の顔見て笑う?てか顔じゃなくて言葉?かな。


てか何にも面白くないし!

「な、なによ!」

何故笑われたのか良く分からないがどこからか、恥ずかしという気持ちが込み上げてくる。

「ははは!ごめんごめん…はは!」

誤ってるが反省してる気配がない。

なんか、むかつく!

私はまだ笑ってる人を無視してヘッドフォンをかけ直した。


「あー、ごめんって!俺は西崎 奏人。」

奏人……

何か聞いたことがある名前。

「奏人って呼んでよ」

そう言って私の前の席に座り向かい合って座る形になった。

なんか、こうまっすぐ見られると余計恥ずかしんだけども……



少し視線を逸らしてコクリと首を少しだけ動かした。

私なりの答え方だ。


「ちょ、ちゃんとヘッドフォン外してよー!なんか話そーぜ!」

そう言い奏人は、私のヘッドフォンを外して自分の首にかけた。

「ちょ、返してよ……!」

取り返そうとするが、上手く交わされる。

んもー!むかつく!

「はあ……分かった。何話すの。」

仕方なく承知をして深くため息をついた。

奏人は私の言葉を聞いて幼い子供みたいな笑顔を向けた。


ドキッ


ちょ、何コレ。何このドキッでのは!?

しかもなんかまともに顔見れないし。

どんどん私の顔が熱くなってくるのが分かった。



照れてる所を隠すように机に肘を付いて顎に手で顔を覆い隠す様に手を添える。

「なぁ、美音って綺麗な声してるよな。」

いきなりの発言に少し吃驚。

しかも私の声が綺麗って……


「ば…馬鹿じゃないの。私の声なんて……」

一瞬昔の事が脳裏にフラッシュバックして少し言葉が詰まる。

っ……なんでこんな時に思い出すかな……

「おい、どした?大丈夫か?」

奏人は、そう言って私の机に手を置いて自分のおでこと私のおでこをくっつける。

は……。

ぇぇぇぇ!?


「よし、熱は無いみたいだ。」

「いやいや!そんなあっさり済ますもの!?」

あまりの不意打ちに吃驚して、思いっきり声を大きくしてしまった。

あーもう。なんか奏人といると調子狂うなあ……


席から立ち上がりある場所に向かおうと教室のドアに向かう。

「おい、どこ行くんだ?もう授業始まるぞ」



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