初春にて。
「うう、さぶっ」
 あまりの寒さで我に返ると、玄関からリビングへと逃げ込む。石油ストーブの熱気が、寒さでかじかむ躰を一気に和ませた。
「何枚、来てた?」
 半袖Tシャツにジーンズという真夏の軽装で、智哉(ともや)がソファから身を乗り出した。
「ねぇ。もう少しさ、ストーブの火、下げない?」
「あ、すまん」
 彼の手には、当然カップのバニラアイスが握り込まれている。それに苦笑しつつストーブの目盛を下げると、彼はそそくさとセーターを着込んだ。
「可笑しいねぇ、前はトモヤの方が断然、寒さ耐性あったのに」
「そんなん、こっちのやり方覚えたら、京都の冬なんてただの寒中我慢大会やんか。何の罰ゲームやって」
 日本の正月は、関西のお笑い番組で初笑いが基本、とか言っていたのが嘘のようだ。深夜番組も関西が一番おもろい、の持論も、気づけばすっかりこっちのローカル番組で笑い転げているのだから、現金なものだ。
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