もう、誰も好きにならない。
里奈の怒りだって当然。
教科書がぶつかって切れた頬から出る血を、手の甲で拭いながら、廊下に散らばった教科書を1冊づつ集める。
教科書が戻ってきて、もう二宮くんから見せて貰う必要がなくなった事に、寂しさと安堵の溜息が出た。
しかし、久々に受けた肉体的イジメは、結構ダメージが大きい。
言葉の暴力もシカトも辛い。 だけど、痛みの伴うイジメは恐い。
さっき、飛んでくる教科書を避ける事さえ出来なかった。 数が多くて。
思い出しては震える手で、教科書を拾い続けていると
「冴木、大丈夫か??」
廊下の様子に気付いた二宮くんが、教室から出てきて一緒に教科書を拾い出した。