魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「えーっ、なんでぇ」

 せっかく勇気を振り絞って貴重な干し肉をあげたのに、がっかりだ。

 勇飛くんが剣を構えたまま言う。

「仕方がない、戦うしかなさそうだ。セリは下がってて」
「うん、ユウヒくん、気をつけて」

 獅子が大きな口を開けて牙をむき、私は大木の陰まで走った。直後、獅子が勇飛くんに飛びかかるが、勇飛くんはひらりとかわす。

 おーっ、お見事!

 でも、獅子はすぐに前足で急ブレーキをかけ、彼に向き直った。私の目の前で、獅子が威嚇するように何度もシッポを地面に叩きつける。

 そうだ、何か魔法を……。

 私はチュニックの下に隠していた魔法の杖を引き抜いた。

「動きを封じよ、インピーディム!」

 呪文を唱えてスペルを綴ると、獅子がその場に縫い付けられたように動かなくなった。もちろんシッポも空中で止まっている。

「ユウヒくん、今よ!」

 大声で言った直後、勇飛くんが剣を一頭の獅子の頭上に振り下ろした。同時に木の上から人影が飛び降りてきて、もう一頭の頭に剣を突き立てる。

「ぎゃあぁぁ……」
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