魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 暗闇の中、私は小さく息を吐いて寝返りを打った。

 寝返りをするのは何度目だろう。どうしても眠れない。

 ベッドに入ったまま耳を澄ませると、隣のベッドからは勇飛くんの穏やかな寝息が聞こえてくる。こんな状況でも眠れちゃうんだ。すごいな。

 明日、いよいよ王城に向かうのだと思うと、緊張もするけれど、それより何より、アーマントゥルードさんが勇飛くんに夜這いでもするんじゃないかと、そっちの方が気になって仕方がない。

 また寝返りを打ちたくなったが、ほかの二人を起こさないように懸命にこらえた。あくびをしかけたとたん、暗闇の中、アーマントゥルードさんがベッドにそっと起き上がるのが、ぼんやりと見えた。

 夜這いだったら許さないから!

 ずっと起きているので目は暗闇に慣れている。私はじっと彼女の様子をうかがった。アーマントゥルードさんは枕元から何かをそっと取り出した。カーテンの隙間から差し込むわずかな星明かりがキラリと反射して、それが剣だとわかる。

 剣を持って何をするんだろう。外のトイレに丸腰で行くのが怖いのかな。
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