魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 勇飛くんが焦った声で言う。でも、右腕をつかんだままの左手を離すことができない。体が痺れてまったく言うことを聞かないのだ。

「体が痺れて……動かない……」
「とにかく止血しなきゃ。ほら、手をどけて」

 勇飛くんが私の左手をつかんだけれど、私の手は縫い付けられたように動かない。

「ダメ……」
「ダメじゃない!」

 勇飛くんに怒鳴られ、私は意味もなくおかしな気分になっていた。

「ユウヒくんが……怒ってる……」

 あのいつも冷静沈着な勇飛くんが。

 そう思った直後、目の前が真っ暗になった。

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