魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 話し声が聞こえてきて、私はぼんやりと目を開けた。

「セリ、気づいたか?」

 勇飛くんの心配そうな顔が見える。

「ここ、どこ?」
「宿屋だよ。今は朝だ。村の医師が応急処置をしてくれたんだ。クマゴンに来てくれるよう使いを送ったから、すぐに来てくれる。すぐによくなるからね」

 勇飛くんが手でそっと私の額を撫でた。

「なんでクマゴン……? 私、そんなに悪いの……?」
「セリ」

 勇飛くんが泣きそうな表情になる。彼のそんな顔を見たのは初めてだ。

「ユウヒくんって……意外と表情が……豊かなんだね」

 それだけ言うとまた目を閉じた。なんだか体が重くて、目を開けているのもすごく疲れる。

「セリ?」
「寝かせた方がいいでしょう。毒が回っているようですから」

 誰かの声が聞こえる。お医者様かな? 毒が回ってるって……ああそうか、ディヴィナが剣に毒を塗ってるって言ってたっけ……王様の料理に混ぜたサーペンなんとかってやつ……。

 毒消しの呪文を思い出そうとしたけど、思い出せなかった。こんなことなら魔法書を持ってこればよかったな……。
< 139 / 234 >

この作品をシェア

pagetop