魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 なんか眩しい。

 うっすらと目を開けると、視界は光がにじんだように真っ白だった。

 ここは天国……?
 まさかね。

 何度か瞬きをしているうちに、そこが四角い大きな窓のある部屋だとわかった。窓から明るい日差しが差し込んでいて、壁も天井も清潔な白色、ついでに私が寝ているベッドも白色だ。

 ここはどこ? 勇飛くんは?

 起き上がろうとしたけど、腕に力が入らない。横を向いたら、ベッドの柵に両腕をかけて眠りこけているマスター・クマゴンのドアップの顔があった。

「キャーッ!」

 思わず悲鳴を上げた。つもりだった。でも、喉から出たのはすきま風のようなヒューっとかすれた音。それでも、マスター・クマゴンが気づいて目を開け、目をこすりながら上体を起こしてパイプ椅子に座り直した。

「おお、津久野、やっと目を覚ましたか」

 津久野?

 私は目をぱちくりさせる。

「いやあ、驚いたぞ。二学期が終わってやれやれと思っていたところに、津久野が電車の中で昏睡状態で発見されたって連絡が入ってなぁ。最初、車掌さんは居眠りかと思って、終点についたとき起こそうとしたんだって。それなのにいくら揺すっても起きないから、おかしいってんで病院に運ばれたんだ。一週間も目を覚まさなかったんだぞー」
「え……一週間も?」
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