魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 掃除道具を片付けた後、涼太はスポーツバッグを肩にかけ、いそいそと教室を出て行った。付き合って三ヵ月になる彼女の上屋さんを下駄箱のところに待たせているのだ。

「お疲れ」

 俺はほかの当番の生徒に声をかけ、鞄を肩にかけると外へ出た。

 剣道部の道場に寄ったが、誰もいなかった。冬休みの稽古は明日からだから、それもそうか。実は彼女の書いた書を見たかったんだけどな。

 それは諦めて駅へと向かうことにする。

 去年、初めてあの書を見たとき、なんて凜とした書なんだろう、と思ったんだ。顧問の先生から、書道部の女子に書いてもらったとは聞いていたけど、二年生になったときにその女子がクラスメイトの中にいて驚いた。

 けれど、彼女は書から抱いたイメージとはぜんぜん違った。初めて話したときの衝撃的な出来事を思い出すと、つい笑ってしまう。

 廊下掃除のとき、彼女が水の入ったバケツを蹴飛ばして、廊下が水浸しになったんだ。あんな漫画みたいに鈍くさい子が今どきいるなんて。

 でも、なんだ目が離せなくてさ。ちょっとはにかんで笑うところとか、見ているとすごく癒されるんだ。
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