魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「帽子はなくなっちゃったな」
「あ……」
今の今まで気づかなかった。
「ごめん」
「いいよ、そんなの。山賊から助けてもらったんだから」
勇飛くんが目を細めて上流を見ながら言う。
「さっきの崖からずいぶん下流に流されたし、もうやつらは追ってこないと思う。詳しいストーリーは歩きながら話すよ」
彼に促され、私たちは川沿いの道なき道を、さらに下流に向かって歩き始めた。
「ここはレッドベリル王国と呼ばれ、慈悲深きビクスバイト王が統治する平和な国だった」
「だった?」
彼の言葉は過去形だ。
「そう。今年に入って急に小麦税と人頭税が倍に引き上げられたんだ。もともとレッドベリルは国土が肥沃で農作物も豊かだったんだが、今年は夏に雨がほとんど降らなくて、小麦以外にも野菜や果物が不作だった。凶作と言っていいくらいだ。そこで、各村が集まって相談し、王に税金の免除を嘆願するために、使者として剣士と魔法使いを送った。ところが……」
勇飛くんがゴクリと喉を鳴らした。私は促すように言う。
「あ……」
今の今まで気づかなかった。
「ごめん」
「いいよ、そんなの。山賊から助けてもらったんだから」
勇飛くんが目を細めて上流を見ながら言う。
「さっきの崖からずいぶん下流に流されたし、もうやつらは追ってこないと思う。詳しいストーリーは歩きながら話すよ」
彼に促され、私たちは川沿いの道なき道を、さらに下流に向かって歩き始めた。
「ここはレッドベリル王国と呼ばれ、慈悲深きビクスバイト王が統治する平和な国だった」
「だった?」
彼の言葉は過去形だ。
「そう。今年に入って急に小麦税と人頭税が倍に引き上げられたんだ。もともとレッドベリルは国土が肥沃で農作物も豊かだったんだが、今年は夏に雨がほとんど降らなくて、小麦以外にも野菜や果物が不作だった。凶作と言っていいくらいだ。そこで、各村が集まって相談し、王に税金の免除を嘆願するために、使者として剣士と魔法使いを送った。ところが……」
勇飛くんがゴクリと喉を鳴らした。私は促すように言う。