魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「ごめんね……」

 私はつぶやくように言った。

「なんで謝るんだ?」
「だって、きっと治癒魔法とかあるでしょう? 私に魔法が使えたら治してあげられるのに……」
「謝らなくていいよ。今できることをしてくれたらいい」
「今できること?」
「そう。もう泣かないで元気を出してくれたらそれでいい」

 勇飛くん……。

 彼の言葉に胸がいっぱいになる。じぃんとしてまた目頭が熱くなったとき、ほかにも今できることがあると気づいた。

 私は紫色のマントの裾をつかみ、歯でくわえて細長く引き裂いた。それを包帯代わりに彼の腕に巻く。

「せっかくのマントを……でも、ありがとう」

 勇飛くんが頬を緩めた。この世界に来てから初めて彼が笑ってくれたような気がする。

「どういたしまして」

 ホッとしたら緊張が解けたみたいで、また涙がこぼれた。勇飛くんが困ったような表情をするので、あわてて涙を拭う。

「ご、ごめんね」
「いや。何もわからないままゲームの世界に来たんだから不安なはずなのに、気遣ってあげなくて俺の方こそごめん」

 勇飛くんの手がいたわるようにそっと私の髪に触れて、私は恥ずかしくなって視線を落とした。
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