魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
「あんた重症ね。剣士様は村はずれの滝の近くに住んでるのよ。修業をするのに最適だとかで、みんなソードマン・ハウスに住んでたでしょ」

 そう言ってマスター・クマゴンは遠い目をした。

「今はユウヒ様とアーマントゥルード様だけね……。アーマントゥルード様もご無事かどうか……」

 その沈んだ様子を見ていると、なんだか胸が痛くなってきた。生き残った魔法使いは私一人だって言ってた。それなのに当の本人がこんな調子じゃ、希望だって抱けないはずだわ。

 私はかじりかけのリンゴを大急ぎで芯だけにしてしまうと、マスター・クマゴンに訊いた。

「もし魔法の勉強をしたいなと思ったら、どうすればいいのかな」
「え?」

 マスター・クマゴンは潤んだ目を私に向けた。

 いけない、悲しんでいる人にこれ以上悲しい思いをさせちゃ。

「あ、ほら、もっといろいろ魔法を覚えたいと思って。たくさん魔法を覚えて強くなって、ユウヒくんを助けたいし、みんなの役に立ちたいから」
「ああ、そうね……」

 マスター・クマゴンは人差し指でそっと涙を拭って言う。
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