魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 唇を離した勇飛くんが、驚いたように私を見る。

「ご、ごめ……魅了魔法なんてかけてごめんなさい」
「セリ、あのね」

 何か言いかけた彼の言葉を私は遮る。

「偽りでキスなんかさせてごめんなさい」
「セリ、偽りなんかじゃ」
「私が魔法をかけたの! だからなの! だから勇飛くんは私にキスしたくなったの! 待ってて、今から解除呪文をかけるから」
「いや、セリ、待って」

 私は勇飛くんの言葉に耳を貸さず、彼の下から這い出した。本を広げてファシネーションの項目の続きを読む。
 “この魔法を解除する呪文は「ディスエンチャント」、ただし魔法使い本人が死んでも呪文は解除される。また、相手が魔法使いに真の好意を抱いている場合は、ファシネーションの効果は発動しない。”

「ディスエンチャント」

 唱えながら杖を彼に向けた。杖の先を突きつけられて、勇飛くんは目を見張っているけれど、とくに何かが光ったりとか煙が出たりとかはしない。

「あのぅ」

 おそるおそる杖を下ろすと、勇飛くんが数回瞬きをした。

「えーっと」

 そう言いながら草の上に座った。膝に肘を乗せ、前髪をくしゃりと握る。
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