コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 よし、と俺は拳を握り締めて自分の部屋でガッツポーズを作っていた。

 何か嬉しいことがあったわけではない。クラブでまた別にあった練習試合では無事に勝ったし、たまーにある晴れ間にまたお日様の下でラケットを振り回すことだって出来たし、ボールの黄色と青空の俺が一番好きなコントラストだって見ることが出来た。

 だけどそれはとりあえず置いておいて。

 これは喜びのポーズではないのだ!それではなくて、そうではなくて―――――――――――

「決心ってやつだよ、うん」

 つい言葉に出して言ってしまった。

 弟と同じ二人部屋なのに、ヤバイヤバイ。今あいつがいなくてよかった!こんなとこ見られたら、またからかおうって側にひっついてくるに違いない。

 同じ水泳の道にすすんだ弟は、俺より遥かに才能があった。それから、努力する力も。だから今中学3年生の弟は全国大会でも去年はいい成績を残していて、高校も水泳の強豪にいくようだった。

 追いつかれ、追い抜かされたけど、俺達兄弟はそれなりに仲がよかった。確かに悔しいことは多かったけど、それはそれだ。兄弟だから負けたくないのがあるけれど、それもあっちも同じこと。水泳では負けたけど、あいつはラケットの持ち方すら知らないんだぞ!そんな小さなことを思って平静を保っている俺だった。

 ま、それもどうでもよくて。

 俺が今、一人で二段ベッドの横で決心したこと、それは。

 佐伯七海に、もうちょっと近づこうってことだ。

 だって高校生なんだし。


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