コントラスト~「て・そ・ら」横内航編~


 うん、そりゃあまあ、色々と。

 そう思ったけど、ここは一応否定しておこう。そう思っていいやと答えたら、目に見えてほっとしていたのが面白かった。

 階段を降りながらぐぐっと伸びをする。

 今日は一日寝てるか立って歌っていただけで体がなまっているみたいな感じだな・・・。やっぱ、ちょっとでもクラブ行くか。

「あー・・・もうほとんど意味ないけど、仕方ないからちょっと顔出すかな」

 それに驚いたらしく、後から佐伯が聞いてくる。

「え?今から部活いくの?だってもう5時過ぎてるよ?」

 だってさ、と俺は振り返って、階段の上にいる彼女を見る。こんなに話せたのはちょっとすごいことだよな、って思いながら。

「クラスの練習でって遅れる理由出してるのに、結局行きませんでしたーは通らないだろ?顧問だけでも会ってこないと。行ったけど遅かったってことにしねーとさ」

「あ、そうなのか」

 小さな声で佐伯がそういって頷いた。

 どうかちょっとでいいからガッカリしてくれてますように、と無意識に心の中で祈る。一緒に電車で帰りたかったけど、まだその勇気は俺には・・・ないし。

 階段を下りきったところで、あ、と思った。

 それは主に夕焼けについてだ。彼女の好きな、夕焼けに関して。

「でもさ」

 急に俺が振り返ってそう言うと、彼女は驚いて立ち止まる。驚かせたかな?いや、でもこれは言いたいんだ。だって盲点とも言うべき特別な場所を教えたい。


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