【完結】遺族の強い希望により
母子がじっと視線を交わすのを、みのりと亮は黙って待った。
緊張した沈黙は一瞬で、決意を込めて玲奈が頷くと、母親はほっと肩の力を抜く。


「本当のことを言うとね、あなたの耳には入れたくなかったの。お父さんが亡くなった時、一緒にいた人のことを。知ったら傷付くかもしれないと思って……それなら、知らなくても良い事だから」

でも、と言った時、母親の穏やかな笑みには少しだけ、苦悶と自嘲が滲んだ。


「まさかあんな形で、表に出てしまうなんて。こんなことなら初めから隠さなければ良かった。余計に傷付けることになって……本当にごめんなさい」


玲奈は返事をしなかった。

見守っていたみのりと亮に後を任せ、母親は静かに部屋を出て行った。
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