【完結】遺族の強い希望により
「玲奈」

と、母親が呼びかける。
呼ばれた玲奈は、覚悟を決めたように喉をごくりと鳴らした。


「ここにあるのは、あなたが知らない、あなたのお父さんの人生の半分よ。全部読んで――、自分の目で確かめて、自分で納得しなさい」


玲奈は視線を自分の膝頭あたりに落とし、それから並べられたノートや手紙を見つめ、もう一度母の目をしっかりと見返した。


「私が欲しい答えが、この中にあるのかしら」

「――どうだろう。知りたくないこともあるかもしれない。でもひとつだけ、これだけは信じて欲しい。……お父さんは私たちを裏切ってはいない。あの人はいつだって良い父親で、良い夫だったわ」
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