【完結】遺族の強い希望により
みのりは2人分の愛を子どもに注ぐ自信があった。
淋しい思いなどさせない。
沢山愛して、幸せに育てるのだ。
誰にも言わずに、安全な時期が来るのを待った。
大事に大事に、宿った命を守りながら。


「私たちが終わってから、何か月経ったと思ってる? 3月に出来た子でも、もう生まれてる。残念だけど私、あなたの赤ちゃんを産んだ覚えはない」


母親が娘の異変に気付くのは、予想していたよりも遥かに早かった。
生理が来ている気配がない、体調悪そうにしている時がある、食べ物の好みが変わった。
妊娠出産の経験がある女の前で、隠し通せるわけがなかったのだ。


『みのり……あんたまさか、妊娠してるの?』


言われた時、目の前が真っ暗になった。
終わった、と思った。
赤ん坊は殺されてしまう、と。
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