【完結】遺族の強い希望により
ジェシカが子どもを生んだのは確かに留学期間が終わって帰国した翌年のことだ。
だがおかしかった。
留学が終わる12月、別れ際の最後の逢瀬で父との間に出来た赤ん坊が、翌年の12月に産まれてくるわけがない。

産まれた赤ん坊は、父の子ではない。


では、自分以外にも父に子どもがいたというのは思い過ごしだったのだろうか。
今度は貪るようにして、一言一句逃さないように目を走らせた。
左側の、ジェシカが妊娠に気付いた時のページだ。
間違いなどではない。

「だって……」

ジェシカははっきりと書いている。
――『リュウの子がこの身に宿った奇跡を、神様に感謝する……』


「お父さんの子は」

と、母が重たい口を開いた。

「流産、だったそうよ」
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