【完結】遺族の強い希望により
「待ってください。夫の子ではなかった……あなたは今、そう言ったのですか?」

相手は日本語で話しているし、聞き取れなかったわけではない。
ただ気持ちの整理が追いつかなかった。
悩んで苦しんで、自分の汚い感情を押し殺して漸く受け入れた事実のはずだった。
それが今になって覆ろうとは、夢にも思っていなかった。


夫のホストファミリーの写真を、何枚も見せられてきた。
疑いようもなく、ジェシカの子は隆司の血を引いているように見えた。

だがそれは、単に夫に良く似た真っ黒な髪の質に惑わされただけだったろうか。
オーストラリアでは目の前の人のような金の髪が主流だと思い込んでいたが、自分が知らないだけで、黒い髪も一般的にあり得るのか――。
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