【完結】遺族の強い希望により
「待って、ちょっと待ってください」

と、美和子はジェシカの話を遮った。

「ではあなたがそう言ったわけではないんですね? お嬢さんにも、本当のことは何も話さずに?」

「そうです、その通りです。ただ2人が互いに親子だと勘違いしているのを、私は黙って見ていました」

だからと言って、ジェシカに全く罪はないとは美和子は思えなかった。
ただそこに悪意だけは微塵もなかったことを、認めてしまいそうな自分が怖かった。


「その光景は、ずっと望んでいたものでした。幻だと分かっていました。いけないことだとも分かっていました。だけどもう少しだけその幸せに浸っていたかった」


ちゃんと本当のことを話すべきだった。
あの時自分が口を噤んだのは間違いだった。
本当に申し訳なかった。
許してくれなくていい、むしろ恨んで欲しい。

ジェシカが改めてそう懇願した時に、美和子は陥落した。
簡単に許せるようなことではない。
だが、恨み続けることも出来そうになかった。
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