【完結】遺族の強い希望により
美和子は病院の廊下にいつまでも座り込んで手をついていたジェシカの腕を引っ張って立たせると、正面から向き合って彼女に頼んだ。

「詳しく聞かせていただけますか? 夫が亡くなった時の状況を」


ジェシカを責めたい気持ちは抑えて、努めて冷静に言ったつもりだった。
隆司の妻として、知っておかねばならないことだ。
この人がしてきたことに対する個人的な感情は今は一旦忘れて、まずは目の前の現実――夫が亡くなったという事実と、向き合わなくてはならない。


美和子はまだ分かっていなかった。
ジェシカの土下座の本当の意味を、彼女が『私のことだけを』責めてくれと言った理由を。
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