【完結】遺族の強い希望により
「もう出ようか」

みのりがそう言うと、亮は首を横に振った。

「お前、何も話さないでこのまま帰るつもりだろ」

頑として動こうとしない亮を見て、みのりは溜め息を吐いた。


「ねえ。聞いてどうするつもりなの?」


――どうにもならないのに。あの子は消えてしまった。もう戻ってこない。


亮が突然別れを切り出したのは、みのりの気持ちを試すためだった――先ほど知らされた真実は、彼女の心を痛めただけだった。

亮は試し、みのりはその期待に応えられなかった。
互いが互いを信じ切れずに辿った末路だ。
仮にやり直せたとして、違う結果があるだろうか。


どちらにしても、失った命はもう戻ってこない。
それは、もしもあの時2人が別れていなかったとしても、同じことだった。
< 260 / 450 >

この作品をシェア

pagetop