【完結】遺族の強い希望により
みのりと亮が交代で線香をあげ手を合わせている間に、玲奈は湯を沸かしコーヒーの準備をしていた。


「これ、みのりからあげて」

みのりが彼女の父のために用意したドーナツは皿に乗せられ、祭壇にではなく、みのりに直接手渡された。

玲奈が祭壇の前に座り線香をあげることはなかった。
そういうものなのか、何かしらの心理がそうさせるのかはみのりには分からない。

言われるままにドーナツを受けとり、再び祭壇に向き合ってから逡巡する。
どの段に供えるとか何か決まりごとがあるのかどうか、みのりにはその知識がなかった。

首を傾げて迷ったまま一旦皿を祭壇の下に置くと、その拍子に祭壇を覆う白布の端に手が触れてしまった。

神聖なものに対して無礼を働いたような気になり、慌ててその手を引っ込める。
慌てたのがいけなかった。
手を引いた瞬間、白布が却って大きく捲れた。
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