【完結】遺族の強い希望により
写真に正対し姿勢を正したまま、みのりはじっとその人を見つめた。
優しそうな笑顔だった。
家にあった写真を使ったのだとしたら、撮影者は玲奈の母親だろうか。

柔らかい眼差しがレンズ越しにカメラを持つ誰かに向けられている。
幸せそうに見えた。


――やっぱり、信じられない。家族を裏切っている人が、こんな風に笑えるわけがない。


死後、遺影用の写真を簡単に加工出来てしまうように。
故人をまるで知らない赤の他人の、根拠のない憶測に基づいたネットの書き込みくらいで、この人の人生を書き換えられて良いわけがなかった。
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