【完結】遺族の強い希望により
「事実無根なんだろ? おばさんの言う通り、気にするなよ」

「事実なのよ!」

慰めようと亮が発した言葉は、虚しく遮られた。


突然声を荒げた玲奈に怯んだ瞬間、みのりの指先はまた小刻みに震えだした。
急速に熱を失っていくのが自分でも分かった。
2人に気付かれぬよう、ぎゅっと固く拳を作り、その手を座布団代わりに借りていたクッションの下に隠す。


玲奈の叫びが、傷に触れる。
渦中の真っただ中にいる彼女に比べたら古傷だ。
けれどみのりのそれも、まだ決して塞がった傷跡ではない。
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