【完結】遺族の強い希望により
「事実があるのね? でも全部じゃない」


必死で傷口を隠しながら、平静を保ったように話すのは難しかった。
けれど今ここへ来ている目的を、みのりはまだ見失っていない。

抑えたトーンの語りかけが、玲奈の心を少しは落ち着かせたようだった。


「話して楽になるなら、聞かせて」


聞いてどうにかなることかなど分からない。
かけるべき言葉も見つからずに互いに気まずい思いをするだけかもしれない。
本心では怖かった。
場合によっては抉られるかもしれない自分の傷口も不安だった。


――玲奈を1人でそこへ置いてはいけない。
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