【完結】遺族の強い希望により
共倒れ、という言葉が過ぎった。
沈んでいく船から玲奈を掬い上げようとしている。
しかしみのりが掴まっているのもまた、いつ沈んでもおかしくない様な頼りない木片なのだ。
大きな波がひとつ打ち寄せれば、それだけで海の藻屑と消えてしまいそうな。


「……話せよ、全部」

「っ」


沈黙を破った亮の声が、みのりの震えを止めた。
玲奈へ向けられた言葉だった。
それなのに、大きな安心感に包まれる。


――大丈夫だ、海は凪いでいる。


「玲奈。大丈夫……大丈夫だよ」

みのりはそう言うと、クッションの下から隠していた両手を出し、玲奈の手をしっかりと握って頷いて見せた。
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