【完結】遺族の強い希望により
校内にはまだまだ人気が残っていた。
ざわつく廊下を急ぎながら数度振り返る。
背中を見送っていたクラスメイトも、三度目に振り向いた時にはもう消えていた。


「大丈夫――もう誰も」

「リュウ、ごめんね」

「謝るなよ」


急ぎ、階段を駆け下りる。
下駄箱で靴を履き替えた時、少女は自分の上靴を、後で処分しておいて欲しいと男に頼んだ。

昇降口を飛び出し、最後にもう一度、通い慣れた教室がある辺りを見上げる。
窓から誰か覗いていないかと思ったが、確認出来なかった。


「誰も見てないな……淋しい?」

「少し……でも、良かった」


校門へは、向かわなかった。
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