【完結】遺族の強い希望により
木造の旧校舎は今はもう使われておらず、年明けには取り壊し工事の着工が決まっていた。
施錠のなされた入口とは別に、裏にまわれば鍵の壊れた通用口が鈍い音を立てて2人を向かい入れる。


踏み入れると埃が舞い、湿ったカビ臭い空気が纏わりつく。
淀んだ暗い雰囲気に、男は怯んだ。


「ジェシー、やっぱり……」

「お願い、リュウ」

「だけど」

「ごめんなさい……でも」

分かった、と、男は少女の謝罪を遮る。

「もう謝らないで。嬉しいんだ、俺だって本当は」
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