【完結】遺族の強い希望により
「別にいいわ、ここで」

と、少女が先に腰を下ろした。
残っていた埃がまた舞い、気にならないわけはないのに満足したように微笑んでいる。

「隣に……」

「うん」

男が言われた通りに腰を沈めると、少女はテーブルの上に鞄を置いた。
中身は渡航に必要な財布やパスポート等必要最低限のものだけだった。
それと、もうひとつだけ。


「リュウ、これ」

「ああ……これも最後か」


渡されたノートを、男が受け取る。
淋しげに笑う男に「手紙を書くよ」と言ってから、少女はそっと顔を近づけた。


目を閉じる。
唇が触れあう。
ノートは小さな音を立てて床に落ちた。


これからしようとしていることに、何の躊躇いも疑問もなかった。
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