【完結】遺族の強い希望により
「驚いた……残ってるのか」


奥の窓辺に校長用の椅子と机があり、入口側には来客用なのか、重厚な造りのテーブルとソファ。
古くさく革も劣化はしているが、立派なものだった。

1階の教室の中には机や椅子も残されていなかったのに、この部屋だけ時が止まったかのように、使われていた当時の状態のまま残されているようだ。


「座れる?」

「汚れるよ」


言いながら男がソファを叩くと、堆積していた埃がそれを待っていたかのように舞い上がる。
咳き込みながら、2人は顔を見合わせて笑いあった。
換気をしたいところだが、窓を開けて外から見つかってはたまらない。
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