【完結】bitter step!
十字のリボンを解こうと伸ばしかけた手が、「待って!」の声でぴたりと止まる。

……先輩?


「――開けたい」


まるで哀願するようなその切ない声音に、ボクが反応に困る前に純平が吹き出した。
そして美紗までもが

「あら、その権利はむしろ私にあるわ」

と名乗り出る。


「誰が作り方教えたと?」

とずる賢い笑みを浮かべた美紗に言われると、……言葉に詰まる。
確かにこのクッキーは、美紗がいなければ出来なかった。


「あー、めんどくせぇ!ジャンケンしろよ!」


誰が開けたって出てくるモンは一緒だろ、と言う純平のその考えに、ボクも賛成だ。

むしろジャンケンするまでもなく自分でさっさと開けてしまいたかったが、既に響先輩と美紗は火花を散らすような視線を絡ませて、拳を構えて静かに立ち上がっていた。
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