【完結】bitter step!
救いの手――その人は、解放の呪文を唱えた。
携帯が震えていた。
鳴ってるのがボクのだか純平のだか、2人の距離が近すぎて、良く分からなかった。


その微かな振動に反応して正気に戻ったらしい純平の顔が、一瞬にして青ざめていく。


その顔を目の当たりにして初めてボクは、キスするときには目を閉じるという不文律を破っていたことに気が付いた。
それくらいの常識は、ボクだって知っているのだけど。


強引に引き寄せられ固定されていた頭が解放されたと思った途端、両肩を強く押されて突き放された。
結構な勢いだった。
痛い、ような気がしたけれど、何にも感じなかった。


――キス、したのか。
純平と、ボクが。

え?
……なんで?
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