【完結】bitter step!
先輩の声が、すぐ近くで響く。

それはまるで精神安定剤のようだった。
波立っていた心に、すうっと染み渡っていく。


気持ちが落ち着いたのとは裏腹に喉元には熱い何かがこみ上げてきて、上手く声が出せなかった。
それでももう大丈夫だと先輩に伝えたくて、大きく頷く。

ボクの頭に、優しく手が乗せられた。


「なお」

「……?」

声が、出ない。
だから首を傾げることで、続きを促す。


「泣いていいんだよ」

「……――ッ!」


――ボクを縛り付けていた何かがその時、ふっと消えてなくなった、気がした――。
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